コラム「スポーツで健康ライフ」第11回
ベストパフォーマンスを引き出すカギは「食事」にあり
日ごろの練習の成果を本番で発揮するためには、緊張やプレッシャーに打ち勝つメンタルの強さと、万全の体調で当日に臨む準備が大切です。
体調管理のなかでも重要な、前日から当日にかけての食事のポイントについてご紹介します。
スポーツに本格的に取り組む人や、部活動や少年団などでスポーツをがんばる子どもたちにとって、試合や競技会への出場は大きな目標であり楽しみのひとつでもあります。また、スポーツをがんばる子どもの親御さんにとっても、試合を応援したりベストパフォーマンスができるようサポートしたりすることはおおきな喜びではないでしょうか。
スポーツに取り組む人の普段の食事は、身体が成長するために必要な栄養素に加えてトレーニングで消費する栄養素も補給できるよう気を付けることが大切ですが、試合前日から当日の食事には注意するべきポイントがほかにもあります。
次にご紹介するポイントを意識し、身体のコンディションを整えることを重視した食事を心がけましょう。
本番前日の食事で気をつけたいポイント
- 消化に時間がかかる食事は避ける
緊張による便秘や下痢など、精神的な要因でお腹の調子が崩れることは多いものです。また、試合前の緊張状態から消化吸収がいつも通りに行われない可能性もあるため、本番前日は消化吸収に時間がかかる食事は避けるのが無難です。 - 油を多く使う料理や、肉を中心にした料理は避ける
本番前はスタミナ補給やゲンかつぎとして、ステーキや焼き肉、トンカツやカツカレーなどを食卓に並べたくなるものです。しかし、揚げ物など油を多く使う料理や肉を中心にした料理は消化に時間がかかります。そのため、本番前日は油っぽい食事を避け、炭水化物を中心にした料理を心がけましょう。 - 生ものや繊維質の多い食材は控える
本番にベストコンディションで臨むために、消化不良や食中毒の可能性がある食べ物もできるだけ避けましょう。とくに、刺身や生卵などの生ものは、普段問題なく食べている人でも緊張やストレスによって消化に影響がでてくる場合もあるのでなるべく避けましょう。また、ごぼうやさつまいもなど食物繊維の多い食品を食べるとお腹の中でガスが発生しやすくなります。本番中にお腹が張っていると、じゅうぶんな力を発揮できないかもしれません。
本番前日の食事は、上記のポイントをおさえつつ、栄養バランスのとれたメニューを目指しましょう。
エネルギー源となるごはん、パン、麺類などの「主食」と、肉や魚などの「主菜」、ビタミンやミネラルの供給源となる野菜などの「副菜」を揃えて栄養バランスを整えます。グリコーゲンを補給するために、炭水化物を多く含む主食はしっかり摂るよう意識しましょう。また、果物を多めに食べて炭水化物を補給するのもおすすめです。
消化のしやすさを考慮して、主菜には脂質の少ない食材と油っこくないメニューを選びましょう。たとえば、焼き魚やサラダチキン、豚肉のしゃぶしゃぶやしょうが焼きなどです。副菜には、白菜などの葉物野菜を使ったスープやほうれん草のおひたしなど食物繊維の少ない葉物野菜を中心にしたメニューや、柔らかい煮物など消化の良いメニューがおすすめです。
本番当日の食事で気をつけたいポイント
- 試合開始の3~4時間前には食事を済ませる
朝食は当日の体調に合わせて食べる量を調整しましょう。食欲に問題がない場合は、ごはん、玉子焼き、豆腐の味噌汁、フルーツなど、栄養バランスが整っていて消化に負担がかかりにくいメニューを用意します。
食欲がわかない場合は、うどんなど食べやすい主食を選んでも良いですし、おにぎり2個とフルーツ、あんぱん1個と野菜ジュース1本など、最も重要な栄養素である炭水化物を中心にしたメニューで構成すると良いでしょう。 - 試合開始の1時間ほど前にエネルギーを補給する
会場でウォーミングアップをする間も、蓄えてきたグリコーゲンが消費されるため、本番前にも炭水化物源となるものを補給したいものです。バナナやゼリー飲料、オレンジジュースなど、吸収が速くエネルギー源になりやすいものを摂取すると良いでしょう。 - 試合中の栄養補給・水分補給も忘れずに
サッカーや野球、バレーボールなど、試合時間が長い競技の場合は試合中の栄養補給もポイントです。スポーツドリンクやゼリー飲料など炭水化物を含む飲み物で水分補給をすれば、エネルギー源も手軽に補給できます。
さて、競技を終えた後は、体内に蓄えていたグリコーゲンを使いきってしまっているような状態です。運動終了後の2時間以内に炭水化物を摂取することで、筋肉内のグリコーゲンがより早く多く回復すると言われているため、速やかに身体をリカバリーするためには試合後の栄養補給が大切です。とくに、消耗したグリコーゲンを補うための炭水化物と、身体をつくるタンパク質を含む食品を積極的に摂ることがポイントです。また、疲労感が強くて食欲がわかない場合は、喉ごしの良いゼリー飲料や、粉末プロテインを活用するのもひとつの手です。
身体づくりや体調管理の基本は食事から。栄養バランスだけでなく消化のしやすさやタイミングなどにも気を配り、ベストコンディションで本番に臨みましょう。