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コラム「スポーツで健康ライフ」第4回

ご存知ですか?ヒートショックの予防にも「運動」が大切です

寒い季節になると「ヒートショック」という言葉を耳にすることが増えます。ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管の疾患が起こることです。冬のお風呂場やトイレなどで起こることが多く、ヒートショックによる年間死亡者数は交通事故の死亡者数を上回るほど危険な現象です。
ヒートショックを防ぐには、家の中の温度差を少なくすることが有効と知られていますが、じつは「運動」も大切な予防策のひとつです。その理由や、おすすめの運動についてご紹介します。

ヒートショックの原因である急激な温度変化への対策を

人の血管は寒いところでは収縮し、暖かいところでは拡張する性質があります。これは血流を増減させることによって体温を一定に保つためですが、そのために血圧や脈拍に変動が生じて心臓に負担がかかります。気温や血圧の変化が大きく急であるほどヒートショックが起こりやすくなり、環境や体調によっては心筋梗塞や脳梗塞、脳卒中などの危険につながることもあります。
暖かいところと寒いところで10℃以上の差がある環境で起こりやすく、11月から3月頃はとくに注意が必要です。脱衣所やトイレを暖かくするなど家の中の温度差をできるかぎり少なくすることがいちばんの対策ですが、屋外など寒い場所へ出る前には準備体操をして身体を温めるよう心がけることも大切です。

ご存知ですか?ヒートショックの予防にも「運動」が大切です

冬の外出前におすすめの準備体操

高齢者をはじめ、糖尿病や高血圧の方、無呼吸症候群など呼吸に問題のある方もヒートショックのリスクが高い傾向にあります。暖房の効いたリビングから廊下へ出るだけでも大きな負担がかかることもあるので、外出前はもちろん、コタツから出てトイレに行くときなどにも「ちょっと準備体操」を習慣づけると温度変化による刺激を抑える効果が期待できます。

  • 肩のギューストン体操
    ①「気を付け」の姿勢から、大きく息を吸い込みながら肩をギューッと持ち上げます
    ②息を吐きながら、肩をストンと落とします
    これを10回ほどくり返します
  • 腰回しストレッチ
    ①足を肩幅に広げて腰に手をあて、腰で大きく円を描くようにゆっくり回します。余裕があれば、ひざを曲げて腰を少し落とすとより効果的!
    ②左回し、右回しをそれぞれ5〜10回ずつおこないます

高血圧への対策もヒートショックを防ぐカギ

血圧の上下はヒートショックの大敵のため、高血圧になりにくい身体づくりも大切です。血圧改善に効果の期待できる簡単なエクササイズをご紹介するので、ぜひチャレンジしてみてください。ただし、現時点で高血圧の診断を受けている方は、医師に運動してもよいかどうか確認してください。

血圧改善におすすめの運動

  • 肩甲骨まわし
    肩を大きく動かして背中の筋肉を使い、肩甲骨の動きを良くして血流をアップさせる体操です。また、猫背の解消によって、自律神経を整え血圧を安定させてくれる効果のある「深い呼吸」ができるようになります。
    ①身体の前で両腕を交差させ、そこから腕を頭の上まで持っていきます
    ②交差した腕をほどきながら大きく円を描くように外側にまわし、ひじを曲げながら背中の下の方で背骨に近づけます。このとき、背中を丸めず胸を開くよう意識するのがポイントです
    ゆっくりと呼吸しながら、10回ワンセット、3セットほどくり返します。呼吸を止めると血圧が上がる原因となるため、深い呼吸を意識しながらおこないましょう

  • エアなわとび
    その場で気軽にできる有酸素運動のひとつです。心臓からたくさんの血液を送って血流を良くし、心肺機能を高めてくれる効果が期待できます。心肺機能を高めることで全身に充分な酸素や栄養を送ることができ、高血圧の予防や改善効果にもつながります。
    ①筒状に丸めた冊子やラップの芯などを両手に持ち、足は握りこぶしひとつ分ほど開いて、ひざと股関節を軽く曲げます
    ②ここから上に伸びあがるように、ひざと股関節を伸ばしながらかかとを持ち上げます
    ③ つま先は地面につけたまま、つま先立ちのような姿勢になったらすぐに最初の形に戻ります。両手は、実際になわとびをするようなイメージで身体の上下にあわせて回します
    少し息が上がる程度の速さで20回ワンセット、2〜3セットを目安にはじめてみましょう
  • ウォーキングスクワット
    有酸素運動の代表格・ウォーキングと、下半身の大きな筋肉を使うトレーニングであるスクワットを組み合わせた運動です。体内の一酸化窒素を増やして血管を柔らかくし、血管に負担をかけずに全身へ血液を送る体づくりをします。また、心臓のポンプ力を強くし、疲れにくい身体になるという効果も期待できます。
    ①両足を揃え、背筋を伸ばして立ちます
    ②肩甲骨を意識して腕を振りながら、太ももが床と水平になるまで持ち上げてその場で大きく8歩足踏みします
    ③足が腰幅になるくらい右足を横に移動して1回スクワット、いったん右足を揃えてから左足を反対側に移動して1回スクワットをします
    10回ワンセット、1日に2〜3セットを目指しましょう。きつい場合は、回数を半分にしたりスクワットを浅くしたりしてもOKです

ヒートショックの予防に「ヒートショックプロテイン」

さて、身体の中にはさまざまなタンパク質がありますが、その中に「ヒートショックプロテイン(HSP)」というものがあります。「ストレス防御タンパク」とも呼ばれ、細胞内の傷ついたタンパク質を修復してくれるため、新陳代謝の促進にとても重要です。
HSPは免疫機能の制御やがん予防にも関与しているといわれており、心臓血管系の疾患を予防する効果も期待できるため、HSPを増やすことは、ヒートショックの予防にもつながるのです。
HSPは大半の細胞に存在しており、体温が1~2℃程上がると増えるため、少し汗が出るくらいの状態で増やすことができます。一方、年齢とともに減少していくと言われています。年齢が上がるにつれてケガが治りにくくなったり、太りやすくなったりするのも、HSPの減少が影響しているのです。

「ヒートショックプロテイン」を増やすには

ヒートショックプロテイン(HSP)は、身体に熱によるストレスを受けることで増加します。身近な例で言うと「適度な運動」がこれにあたり、スポーツが健康に良いと言われるのも、HSPが免疫力を高めてくれるためです。運動によって筋細胞中のタンパク質が増加するには、タンパク質の合成が迅速に行われることが必要となります。このときにHSPが多くあると、合成がスムースに進むのです。
HSPを効率的に増やすには、適度な運動、とくに「筋トレ」と「有酸素運動」の組み合わせが適していると言われています。腹筋やスクワット、腕立て伏せなどを20回程度した後に、ウォーキングを15分程おこなうなどの組み合わせがおすすめです。汗が出て少し疲れを感じるくらいが目安です。

また、「入浴」も効果的です。シャワーではなく湯船に浸かって体温を上げ、保温することでHSPの増加が期待できます。40℃くらいの湯温で10分程を目安に入浴し、入浴の前後にはコップ1杯程度の水分を補給するのがおすすめです。
冬場の入浴時はヒートショックの発生率がとくに高いため、脱衣所の保温などで急激な温度変化に注意するとともに、せっかく温まった身体を冷やさないよう湯冷めにも注意が必要です。

ヒートショックは、温度環境への少しの工夫と生活習慣の改善でぐっとリスクを減らすことができます。高血圧の改善につながる減塩、ダイエット、禁煙なども心がけ、できる予防を習慣化していきましょう。

 

ヒートショック予防と運動の関係などについて紹介されたこちらのページもご覧ください。

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