コラム「スポーツで健康ライフ」第18回
夏場のスポーツは熱中症にご用心。水分補給と正しい予防対策を忘れずに
スポーツによる熱中症事故は適切に予防さえすれば防ぐことができますが、予防に関する知識がまだまだ普及していないのが現状です。正しい予防と対策を知り、熱中症事故をなくしましょう。
夏に限らず、運動時の体調管理は基本中の基本です。とくに、気温や湿度が高い環境下でのスポーツはからだに大きな負荷がかかるため、寝不足や疲労、風邪気味などの体調不良は普段以上に危険と心得て一層の注意をはらうことが大切です。
また、梅雨明けの時期には温度が急激に上がることも多く、からだが暑さに慣れていない状況での突然の猛暑日などは熱中症の発生件数がとくに高まります。
これを防止するためには、本格的な暑さを迎える前に、一旦運動量を落としたところから5日間程度の間に少しずつ運動量を上げてからだを暑さに慣らしていく「順化トレーニング」が効果的です。仕事などで調整が難しい場合は、普段の生活の中で十分に暑さに慣れてくるまでは激しい運動は控えるなどの工夫をしましょう。

日本スポーツ協会(JSPO)では、熱中症事故をなくすために熱中症予防の原則を「熱中症予防5ケ条」としてまとめています。
その抜粋を以下にご紹介するので、自分が運動をするときはもちろん、家族のトレーニングに付き添うときなどにも参考にしてください。
熱中症予防5ケ条
1.暑いとき、無理な運動は事故のもと
気温が高いときほど、また同じ気温でも湿度が高いときほど、熱中症の危険性は高くなります。また、運動強度が高いほど熱の産生が多くなり、やはり熱中症の危険性も高くなります。
暑いときに無理な運動をしても効果はあがりません。環境条件に応じて運動強度を調節し、適宜休憩をとり、適切な水分補給を心がけましょう。
2.急な暑さに要注意
熱中症事故は、急に暑くなったときに多く発生しています。夏のはじめや合宿の初日、急に気温が高くなったような場合に熱中症が起こりやすくなります。急に暑くなった日は無理せず軽い運動にとどめ、暑さに慣れるまでの数日間は軽い短時間の運動から徐々に運動強度や運動量を増やしていくようにしましょう。
3.失われる水と塩分を取り戻そう
暑いときには、こまめに水分を補給しましょう。汗からは水分と同時に塩分も失われます。スポーツドリンクなどを利用して、0.1~0.2%程度の塩分も補給すると良いでしょう。
水分補給量の目安は、運動による体重減少が2%を超えないように補給することです。運動前後に体重を測ることで失われた水分量を知ることができるので、運動の前後と毎朝起床時に体重を測る習慣を身につけ、体調管理に役立てましょう。
4.薄着スタイルでさわやかに
皮膚からの熱の出入りには、衣服がおおきく影響します。暑いときには軽装にし、素材も吸湿性や通気性の良いものにしましょう。直射日光がある場合には帽子を着用するようにし、防具をつけるスポーツでは、休憩中に衣服をゆるめてできるだけ熱を逃がしましょう。
5.体調不良は事故のもと
体調が悪いと体温調節能力も低下し、熱中症につながります。疲労、睡眠不足、発熱、風邪、下痢など、体調の悪いときには無理に運動をしないことが大切です。また、体力の低い人、肥満の人、暑さに慣れていない人、熱中症を起こしたことがある人などは暑さに弱いので注意が必要です。学校で起きた熱中症死亡事故の7割は肥満の人に起きており、肥満の人はとくに注意しましょう。
また、同協会発行の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」において、スポーツ時の熱中症を予防するための指針も次の通り示されています。
熱中症予防運動指針

暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なり、①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標です。
暑さ指数は労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、ISO等で国際的に規格化されており、現在の数値は環境省の熱中予防情報サイトなどで確認することができます。
現在の暑さ指数(WBGT)は、こちらのページで確認できます。

運動中は通常時よりも熱中症になりやすいため、夏場にスポーツをするときはなるべく涼しい時間を選び、水分補給をこまめにしながら行うことが熱中症予防の基本です。また、運動中に少しでも体調不良や異変を感じたときは、自分の状態をできるだけ多くの人に伝え、すぐに運動を中止する勇気を持ちましょう。そして、仲間とスポーツをしているときは周囲の様子にも目を配り、早期の発見と対応で重症化を防ぎましょう。