コラム「スポーツで健康ライフ」第6回
適度な運動を無理なく続けて、免疫力アップを目指そう
ちなみに、運動については”適度”であることが大切なポイントで、過度な運動はかえって免疫力を低下させてしまう可能性もあります。
そこで今回は、免疫力と運動の関係についてご紹介するほか、免疫力アップが期待できる運動の目安とおすすめのエクササイズもご紹介します。
運動で免疫力がアップする理由のひとつは、筋肉を動かすことによって体温が上がり、血行が良くなることで全身に酸素や栄養が行き届くようになるためです。また、ストレス解消による免疫力アップの効果も期待できます。しかしその一方で、過度な運動によってストレスがかかって自律神経のバランスが崩れ、免疫力が下がることもあるため、「適度な運動」であることが大切です。
運動で免疫力がアップする理由とは
- 体温が上がる
運動をすると筋肉が動いて体温が上がり、血行が良くなることで全身に酸素や栄養が行き届くようになります。さらに、運動によって溜まった疲労を解消するために筋肉へ血液が送り込まれるようになり、この働きによってますます代謝がアップします。体温が高くなると、血液中の白血球に含まれる免疫細胞が活性化されるため、免疫力も高まると考えられます。
ちなみに、風邪をひいたときに熱が出るのは体内で免疫細胞とウイルスが一生懸命戦っているため。体温が1℃上がると、免疫力はなんと5~6倍になるとも言われています。 - ストレス解消になる
私たちの体には「交感神経」と「副交感神経」という2つの自律神経があり、免疫機能はこれらの自律神経が交互にバランスよく働いてはじめて正常に機能します。ストレスをためていると血管を収縮させて筋肉を固くする交感神経が優位になり、免疫細胞が循環しにくくなって免疫機能も低下してしまうのです。
運動で汗をかいてストレスが吹き飛んだ、という経験をしたことがある方も多いと思いますが、運動して身体を温めることは心身をリラックスさせることにつながるため、ストレスも発散されます。
免疫力を高めるには運動が効果的ですが、運動ならなんでも良いというわけではありません。運動習慣のない人が急にマラソンやハードな筋トレなどの過度な運動をすると、「ストレスホルモン」と呼ばれるコルチゾールやカテコールアミンが分泌され、免疫機能の大敵であるストレスがたまってしまいます。
おすすめは、うっすら軽い汗をかく程度の軽い有酸素運動をすること。ウォーキングやストレッチなど、気軽にはじめられる運動でリフレッシュしながら免疫力アップを目指しましょう。
免疫力アップにおすすめの運動
- ウォーキング
歩いているうちに徐々に体温が上がり、血行や代謝も促進されて免疫力が高まります。運動としてのウォーキングはただぼんやりと歩くのではなく、軽く汗をかく程度の運動量を意識して、1日8,000歩ほど歩くのが理想です。
ちなみに、歩幅や歩くペースなどにもよりますが、8,000歩の目安は距離にして約6km、90分程度のウォーキングにあたります - エアなわとび
室内でも気軽にできる「エアなわとび」は、天気や時間帯を気にせずできるおすすめのエクササイズです。実際にロープを使う必要はなく、筒状に丸めた冊子やラップの芯などを両手に持ち、なわとびのように両手を回しながら足腰をやわらかく使って身体を上下させます。ジャンプはせず、かかとが浮く程度で良いので音も気になりません。
まずは30秒ほど続け、慣れてきたらそれを3〜5セット繰り返してみましょう。もちろん、お庭で実際になわとびをするのもOKです - 下半身の筋トレ
下半身には大きな筋肉があり、全身の血流のためにもぜひ鍛えておきたいところです。下半身の筋肉を全体的に鍛えられるスクワットなど、週に3日程度の軽い筋トレ習慣をつけることは、デスクワークなどで衰えやすい足腰の強化にもつながります。
スクワットの基本は、足を肩幅程度に広げて立ち、4秒かけて股関節を意識しながら腰を落として、再び4秒かけて元の姿勢に戻ること。ひざは深く曲げすぎず、90度まで。ひざがつま先より前に出ないように注意しながら、10~20回を数セットくり返しましょう - 上半身のストレッチやヨガ
下半身の筋肉を鍛えることに加えて、上半身の筋肉をほぐす運動も取り入れるとさらに効果的。ストレッチやヨガにはリラックス効果もあるので、副交感神経を優位に導くことができます。
仕事や勉強の合間などにも気軽にできる、椅子に座った状態で背中の筋肉をほぐすストレッチがおすすめです。
背筋を伸ばして椅子に座り、両手を頭の後ろで組んだポーズで上半身を横に倒していきます。ゆっくりと呼吸しながら、左右交互にくり返しましょう。猫背対策にもなりますよ
さて、免疫機能を高める「適度な運動」とは具体的にどのくらいの運動でしょうか。
厚生労働省健康局から発表されている「健康づくりのための身体活動基準2013」では、次のような活動を日々の生活の中で習慣づけることが推奨されています。
免疫力をアップさせる「適度な運動」の目安
- 日常生活では、毎日60分間積極的に身体を動かす
歩く、犬の散歩をする、掃除をする、自転車に乗る、速歩きをするなど - さらに週2回以上、1回30分以上の息が少しはずむ程度の運動をする
軽い筋トレ・ボウリング・ウォーキング・ラジオ体操など
ある研究によると、毎日の適度な運動習慣によって風邪をひきにくくなることが報告されています。これは、18〜85歳の男女1,002人を対象に、冬期12週間の風邪の症状と運動頻度の関係を調べたものです。「運動するのは週に1日未満」と答えた運動習慣の少ない人214人は風邪をひいた日数が平均8日を超えたのに対して、「週に1〜4日運動している」「週に5日以上運動している」と答えた人が風邪をひいた日数は5日前後であり、運動習慣のある人は風邪をひきにくいと考えられます。
また、運動習慣のない人に適度な運動を継続してもらい、唾液中のIgA(鼻や口の粘膜といった免疫の最前線で働く代表的な免疫物質)量の変化を測定した研究でも、運動習慣によってIgAの分泌量が増えたことが報告されています。
運動を続けていくことは簡単なことではありませんが、万里の道も一歩から。まずは継続することを優先して、身体をほぐすストレッチやラジオ体操、軽い散歩など身体を動かすことに慣れることからはじめてみてはいかがでしょうか。