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コラム「スポーツで健康ライフ」第9回

楽しくからだを動かして、「フレイル」を防ごう

超高齢化社会が進むなか、健康寿命に関わる課題として注目されているのが「フレイル」です。メディアなどでも取り上げられる機会が増えたのでご存知の方もいると思いますが、フレイルとは「加齢によって筋力や心身の活力が低下した状態」を表す言葉です。
フレイルの予防には、「運動」「栄養・口腔機能」「社会参加・こころの健康」の3つをバランスよく実践することが大切で、フレイルと運動との関連は極めて強いと考えられます。年齢を重ねてからもいきいきと毎日を過ごせるよう、フレイルについて、そしてフレイル予防につながるおすすめの運動についてご紹介します。

「フレイル」になるとどうなる?

フレイルの語源は、「虚弱」「脆弱(ぜいじゃく)」などを意味する「frailty(フレイルティ)」で、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を指しています。例を挙げれば「足腰の筋力が衰えて、歩くのに杖が必要な状態」というイメージでしょうか。多くの方はフレイルを経て要介護状態へ進むと考えられ、高齢者においてはとくにフレイルが発症しやすいことがわかっています。
フレイルには、筋力低下などが起こる「身体的フレイル」だけでなく、認知機能の低下やうつから起こる「精神・心理的フレイル」、歯や口の衰えから起こる「オーラルフレイル」、独居や閉じこもりを背景にした「社会的フレイル」などの要素も含まれています。

フレイルの状態になると、死亡率の上昇や身体能力の低下が起こります。たとえば、健常な人が風邪をひいても通常は数日で治りますが、フレイルの状態になっていると風邪をこじらせて肺炎を発症したり、だるさによって転倒し、それが打撲や骨折につながったりするケースがあります。また、入院すると環境の変化に対応できずに、一時的に自分がどこにいるのかわからなくなったり、感情をコントロールできなくなったりすることもあります。

楽しくからだを動かして、「フレイル」を防ごう

フレイルは年齢を重ねるほど発症しやすいことがわかっており、日本老年医学会の研究によると65~69で5%強、70歳代後半の75~79歳で20%弱、80歳以上になると35%近くになるという調査結果が出ています。このことからわかるように、フレイルの発症は75歳から一気に増加する傾向があるほか、糖尿病、骨粗鬆症、認知症、うつなどの疾患を持つ方もフレイルになりやすいと言われています。

「フレイル」の基準について

フレイルの基準にはさまざまなものがありますが、一般的に採用されているのは次に挙げるものです。5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。

やってみよう、フレイルのセルフチェック

食欲がなく、やせてきた気がする
具体的には、意図せずに年間4.5kgまたは5%以上の体重減少があったなど
なかなか疲れがとれなくなってきた
具体的には、何をするのも面倒だと週に3、4日以上感じることがあるなど
歩くのが遅くなった
具体的には、青信号の間に横断歩道を渡りきれないなど
力が入らなくなってきた
具体的には、買い物したものを運ぶのが大変、瓶のふたやペットボトルのキャップがあけられないなど
外出するのがおっくうになった
具体的には、人と接する機会が減った、定期的に運動していないなど

3つ以上チェックのあった方はフレイル状態である可能性が高く、注意が必要です。また、上記のチェックに当てはまらなくても、現在5つ以上の病気で治療中の方もフレイルの可能性があります。

フレイルを予防するために

病気や障害などによる健康の喪失、配偶者や友人など親しい人々との死別による喪失などをきっかけとして、社会とのつながりを失うことがフレイルの入り口になるとも言われています。社会とのつながりを失ったことで生活範囲が狭まり、こころの健康を害し、口腔機能や栄養状態、身体機能までもが低下をきたしてドミノ倒しのようにフレイルが進行、重症化していく恐れがあるのです。

フレイルの予防や改善には、「運動」「栄養・口腔機能」「社会参加・こころの健康」の3つをバランスよく実践することが大切です。なかでも「運動」は、身体機能の維持とともに、こころの健康のためにも重要な意味を持っています。
逆を言えば、運動不足は体力の低下や持久力の低下、筋力の低下を引き起こすだけではなく、「動くのは面倒」「動くと疲れる」など気力の低下や外出機会の減少にもつながります。さらに、身体活動量が低下すると食欲が減退して食事量が低下し、慢性的な低栄養状態となり、歩行能力の低下や身体機能の低下につながります。

フレイル予防におすすめの運動

  • ウォーキング
    気軽に始められる有酸素運動として人気の高いウォーキングは、気持ちのリフレッシュや、ウォーキング仲間とのつながりづくりなどにもぴったりです。このコラムの第1回でもウォーキングについてご紹介していますので、ぜひご覧ください。
    気軽にできる「ウォーキング」で身体も心も活発に
  • レジスタンス運動
    レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返しおこなう運動です。ダンベルやチューブなどを利用しても良いですが、椅子スクワットや腕立て伏せ、かかと上げなど、気軽にできる自重トレーニングを続けることからはじめてみましょう。
  • アクアエクササイズ
    水中でのウォーキングなど、水の浮力や抵抗などを利用した運動がアクアエクササイズです。水の浮力によって関節への負荷がかかりにくいため障害や肥満がある方も取り組みやすく、心肺機能の向上やリラックス効果も期待できます。
  • インターバル速歩
    速歩きとゆっくり歩きを交互に繰り返すウォーキング法で、普通にウォーキングするだけでは効果の得られない筋力・持久力の向上が望めます。週4日以上、1日の速歩の合計が15分になるように取り組めば良いため、仕事などで運動の時間がとりにくい人でも移動時間を有効に使って運動を継続することができます。

また、各自治体やスポーツ施設などが開催しているスポーツ教室や運動サークルなどに参加するのもおすすめです。運動の習慣づくりはもちろん、外出やコミュニケーションの機会を増やすきっかけづくりにもなります。茨城県内のスポーツクラブ情報ページも参考にしてください。
茨城県内の総合型地域スポーツクラブ

 

フレイル予防のために気をつけたい日常のこと

フレイルを予防することの意味は2つあり、ひとつはフレイルに陥らないようにすること、もうひとつはフレイルが進行するのを防ぐことです。どちらも対処法は似ているので、次のポイントに気をつけて日常生活を送ってください。

  • 適度な運動習慣を身につける
    これまでにご紹介したとおり、フレイルの予防に運動がもたらす効果は非常に大きく、運動をすることによって筋量、骨格筋機能が上がります。すると、趣味をはじめいろいろな活動ができるようになり、人と会う機会も増え、気持ちも明るくなります。活動範囲が広がることは、認知症やうつの予防にもつながります
  • バランスのよい食事を心がける
    加齢とともに胃腸機能が衰え、食事量や食欲が低下して慢性的に低栄養の状態になると、フレイルに陥りやすくなります。欠食をせず、バランスのよい食事を心がけること、そして、筋肉のもととなるタンパク質を十分に摂取することがポイントです
  • 外出や人と接する機会を増やす
    趣味のサークル活動、町内会やボランティア活動など、積極的に地域社会にかかわる活動はフレイル予防に効果的です。社会の一員としての居場所があること、そこで生まれる人との交流は良い刺激となり、心身の健康におおきな役割を果たします

健康寿命をのばすためにも、フレイルの予防は大切なテーマです。高齢者に発生しやすいフレイルは、適切に予防すれば日頃の生活にサポートが必要な要介護状態に進まずに済む可能性があります。ご自身やご家族が日頃からフレイルの予防を意識して健康づくりを進めていきましょう。

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